令和8年度 入学式 科長訓辞

 新入生の皆さん、父母保証人ご家族の皆さま、中等科ご入学おめでとうございます。

 

 近年はソメイヨシノが三月中に満開となることが珍しくなくなりましたが、皆さんの入学を見届けようと今年の桜たちは待ってくれていたようです。この目白の森ではこの先も桜の季節がわりあい長く続き、いろいろな桜が次々と咲いて新入生を迎えてくれます。十二月帰国子弟および二月の一般入学試験を突破した諸君、初等科から進学の諸君、合わせて 二〇四 名の新入生が今日ここに、新しい中等科のメンバーとして加わりました。教職員一同ご入学を心よりお慶び申し上げます。

 

 輝かしい新入生諸君を迎え、こちらの気持ちも晴れやかです。上級生や周りの大人たちも、今日の気持ちを覚えておきましょう。皆さんの中等科生活が夢にあふれたものとなるように、学校として努力して行きたいと改めて今感じています。

 

 本日は来賓として、学校法人学習院 耀英一院長、平野浩専務理事、島津忠美常務理事、佐藤吉孝常務理事、学習院桜友会 諸戸清郎会長、学習院父母会 内田圭子副会長、学習院中等科高等科櫻友会 斉藤正彦会長にご臨席を賜っています。ご来臨まことにありがとうございます。

 

 ご存知のように学習院は歴史ある学校で、弘化四年、京都に開かれました。明治十年(1877年)、東京・神田錦町に改めて開設され、以来今日まで社会のリーダーを輩出して来ました。来年2027年に創立150周年を迎えます現在は耀院長の下、150年を超えたその先の未来に向けての準備としてさまざまな計画を策定しているところです。

 

 その学習院が掲げる理念は「ひろい視野 たくましい創造力 ゆたかな感受性」という三つの言葉に表現されています。広い世界をよく見て、敏感に感じ取り、創造的な発想を巡らせることを表しています。新入生の皆さんはこの三つの言葉をまず覚えておいてください。

 

 その上で今日私から皆さんにお願いしたいことは、これらの言葉を日々の生活に活かすために、次の二つのことを心がけてください。

 

 まず一つ目です。皆さんはつい先ごろ初等科・小学校を卒業しました。その時、皆さんはある意味での別れを経験したと思います。小学校・初等科時代に出会った人たちや出来事などの思い出は皆さんにとってかけがえのないものだろうと思います。これからの中等科生活で出会う人たちや出来事も、いずれはかけがえのないものとなります。さらに、今この若い時期の出会いは一生ものです。中等科では一生つき合える友人や先輩後輩ができます。この三年間、高等科までの六年間に出会う友人との時間を大切に過ごしてください。そこで注意が必要となるのですが、これまでのような子ども同士の付き合い方ではこれからは通用しなくなっていくことを心に留めてください。これは少し説明が必要でしょう。皆さんは自分たちがさまざまな意味で変化の中にある、ということを感じていることと思います。たとえば体格の変化に見られるように、去年まで着られた服が着られなくなるように、皆さんは成長しています。そしてその成長の進み方は人によってさまざまです。それは身体だけのことではなく、気持ちの面でも同じです。昨日は気にも留めなかったことに今日になって突然気がついて、どうにも気になって仕方がない、という感覚は誰でも経験することと思います。そういう変化は誰にでもあることでありながら、気持ちの変化というものは外からは分かりにくいものです。昨日は何気ない会話として交わしていた皆さんのふつうの言葉が、ある時から異なる受け留めをされてしまうことが、これからは起こり得るのです。これはなかなか困った事ですね。どうすれば良いのでしょうか。せっかく出会った友だちを大切にするためには、礼儀を重んじることです。親しき仲にも礼儀あり、といいます。日常会話の中で、この相手との仲であればこのくらいの態度で接するのが良いだろう、ということを考えるものですが、相手も自分も変化の中にあることを忘れてはなりません。相手の様子に合わせた付き合い方、言葉の選び方を考える、そしてお互いの変化の中で相手をある程度大目に見る、そういうことが中学生同士には求められます。そのためには相手をリスペクトしてください。リスペクトとは大切に思うことです。相手と自分を同等にリスペクトすることが中学生として日常の中で求められることをしっかりと覚えておいてください。

 

 その上で、出会った友人や先輩後輩とたくさん話してください。人と話せば、意見が異なることは当然あります。自分とはこんなに異なる意見の人がいるのかと驚くこともあるでしょう。その驚きこそが人との本当の出会いです。その出会いを大切にしてください。

 

 二つ目です。学習院が私学として再出発した時期に学習院長をお務めになった安倍能成先生の残された「正直であれ」という言葉について話しましょう。この正直ということが、先ほどの三つの言葉を活かす鍵であり、礼儀の基本であると私は考えています。安倍先生は哲学者であり、文部大臣として戦後日本の教育再興に尽力され、その後、新しい教育制度の下で院長として学習院の在り方を示されました。そこの扉の向こう、ホワイエに先生の像が置かれています。この後に歌う院歌を作られたのも安倍先生です。安倍先生は哲学者であり、文部大臣として戦後日本の教育再興に尽力され、その後、新しい教育制度の下で院長として学習院の在り方を示されました。この後に今日は一番だけを歌う院歌を作られたのも安倍先生です。正直とは、嘘をつかない、ということですが、ここで言う意味はそれだけではありません。事実に基づいて物ごとをありのままに、自分の立場や都合を含めることなく公平な態度で受け留める、真実に対する謙虚な態度を指しています。

 

 異なる意見の人たちの中で正直で公平な態度を取るために、何でも分け隔てなく受け容れるフランクな心と、目の前の相手と自分を同等にリスペクトする心を持たなければなりません。フランクとは、率直とか、ざっくばらんな様子をいいます。自分の考えを持つと同時に、他の人の意見を受け容れて相手と自分を同等にリスペクトするフランクな心を持って、日々の学校生活の中で、ひろい視野、たくましい創造力、ゆたかな感受性を育んで欲しい、そのように考えています。

 

 ご家族の皆さま、中等科入学という節目を迎え、感慨ひとしおのことと拝察します。ご承知のように、子どもの成長は決してエスカレーターのように真っすぐではありません。自分で上る階段という例えがありますが、上ったり下ったりの繰り返しです。時折大人の顔を見せながらも、やっぱりまだ子どもだと感じるときも多くあるでしょう。それが中等科生です。お子さまがさまざまな表情を見せるこの時期を、是非この学校とともに歩んでください。ご家族にとって最も身近な存在としてこの学校は協力してまいります。よろしくお願いいたします。

 

 新入生諸君、これから始まる中等科での生活には、勉強とともに部活動・委員会活動、学校行事が盛りだくさんに用意されて皆さんを待っています。毎日を大いに楽しんでください。自分の知らないことがたくさんあることに気づき、自ら考え、学んでください。フランクな心をもって共に多くを学び合って行こうではありませんか。

 

 以上をもちまして、新入生の皆さんを迎えるにあたっての私からの言葉といたします。

 

令和八年四月七日

 

学習院中等科長 髙城彰吾

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