令和5年度卒業式 科長告辞

 三年生の皆さん、中等科卒業おめでとうございます。

 

 本日は、昨年度まで行われていた新型コロナ対策を撤廃し、平常どおりの卒業式を行うことといたしました。ただインフルエンザの影響もある中ですので、コロナ禍で学んだように状況の受け留め方には個人差があります。必要に応じてマスクを着用したり近い距離での会話を控えめにするなどの対策を意識してください。ご協力をお願いいたします。

 

 日は来賓として、学校法人学習院耀英一院長、平野浩専務理事、香取純一常務理事、島津忠美常務理事、城谷俊一郎常務理事、学習院桜友会上野彰副会長、学習院父母会神山直己会長、学習院中等科高等科櫻友会斉藤正彦会長にご臨席を賜っています。

 

 ご来臨まことにありがとうございます。

 

 今日は、皆さんに三つのことをお話ししようと思います。

 

 今年度は、当初の予想と異なる、思わぬ展開の1年でした。五月に新型コロナが五類に移行され、社会や学校のさまざまな面でコロナ以前の形を取り戻す努力が行われたことは皆さんのよく知るところですが、すぐに以前の形には戻せない要因が思わぬところに潜んでいました。長く続いたソーシャル・ディスタンスとマスクの生活で思った以上に生徒諸君の免疫力が衰え、中等科では二学期のインフルエンザA型を中心とする第一波と三学期のB型による第二波という、二度の大流行を迎えた一年でした。

 

 せっかくの機会なので、この経験から何かを学び取りたいと思います。しっかりと鍛えて感染症に負けない身体を作ることは言うまでもありません。さらに少し大きく解釈してこれからの皆さんの生活に活かすことを考えましょう。コロナ禍が始まって間もないころ、皆さんの多くは、急激な生活の変化にしっくりこない、これでいいのだろうかという違和感を持ったことと思います。その後、徐々にその生活に慣れ、別の楽しみ方をみつけ、頑張って違和感を忘れて過ごしたのだと思います。五類に移行して、さあ元に戻そう、としたとき、再びの急激な変化に免疫が追い付かず、皆さんの体調を見ながら、コロナ前の状態に戻すペースを調節することになりました。そう考えると今回のインフルエンザ流行は、コロナ前後で変化する生活について私たちに一度立ち止まって考え直すきっかけを与えてくれた、私はそういう風に感じています。

 

 皆さんはこの先の生活の中で、新しい環境の新しい生活習慣に飛び込んでいくことになります。そこには一時的な違和感をもつこともあるかもしれません。やがて努力してその状況にも慣れ、新しい環境になじんでいくことでしょう。ただその生活のなかで、ある時ふっと自分の身体の中に眠っていた以前の心の状態が頭をもたげ、変わりつつある自分自身に、はっと気づくことがあると思います。そのときは焦らずにその気持ちを大切にしてください。その段階を経て、変わっていくこと、前に進むことを自分の心のなかにしっかり位置づけ、自分のペースで新しい環境に挑み続けて欲しいと願っています。

 

 多くの生徒は高等科に進学しますが、他の進路を取る諸君もいます。このメンバーでこうして一堂に会うのは今日までとなりますが、中等科時代を共有する、今皆さんの傍らにいる友だちをこれからも大切にしてください。

 

 二つ目です。皆さんの多くは今回の卒業が幼稚園・保育園から数えて三回目の卒業だと思います。これまでの卒業と比べると、卒業を迎える自分自身の感じ方が変化して来ていると思います。人から言われることでなく、自分自身の受け留めとして過去の卒業と今回では何が違うか考えてみてください。違いはいろいろあると思いますが、これまでより、在学中の自分自身の変化というものをよりはっきりと自覚できているのではないでしょうか。

 

 三年前、皆さんは「大人の仲間入りです」と言われました。ただやがて、大人というものはその資格を人から与えられるのではなく、自分で自分の中に作っていくものだ、ということに気づいたと思います。わたしからも終業式の話や中等科だよりの文章で、考えを述べました。周囲から何を求められ、何が認められるのか、ということについて自覚を持ってしっかり考えることが、自分自身への責任を果たし、周囲の信頼を得ることにつながる、その大切さを述べてきたつもりです。

 

 今の皆さんは、ただ定められた三年間という年限を過ごしただけではなく、この三年間何かに向けて自分の力で進み、自分のなかで何かを変化させ、また何かを作り出しながら、前に進もうとした。そして今日卒業を迎えました。自分のなかに作り上げた何か、それをしっかりと感じておくことがこの先の高校生活をより有意義なものとするでしょう。

 

 もう一つ考えておくべきことがあります。それは、ご家族への感謝です。皆さんが日々何かに力を注いだ以上に、ご家族は皆さんの毎日のために力を注ぎました。皆さんの生活全般、食事、洗濯はもとより、思春期に道を踏み外すことのないように、間違ったことをしないようにと皆さんに分からないような工夫もなさったことでしょう。ご家族は誰よりも強く皆さんの成長を願い、祈り、案じていました。そのことへの感謝を、この機会に改めて感じてください。できればその感謝を言葉にすると良いでしょう。今日の日を迎えた感慨は、皆さんだけのものではないことを決して忘れないでください。

 

 ご家族の皆さま、ご子息の中等科ご卒業、まことにおめでとうございます。教職員一同、ご子息の成長を心よりお祝い申し上げますとともに、皆さまのご協力に深く感謝いたします。

 

 卒業生諸君、改めておめでとうございます。明日から始まる新しい生活を頑張ってください。

 

 以上をもちまして、わたくしからのはなむけの言葉といたします。

 

 

令和六年三月十七日

 

学習院中等科長 髙城彰吾

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