令和6年度入学式 科長訓辞
新入生の皆さん、父母保証人ご家族の皆さま、入学おめでとうございます。
今朝方の雨は上がったようです。今年は例年よりも三月が寒く、ちょうど今ソメイヨシノの満開を迎えています。この目白の森ではこの先も桜の季節がわりあい長く続き、いろいろな桜が次々と咲いて新入生を迎えてくれることでしょう。十二月帰国子弟および二月一般の入学試験を突破した諸君、初等科からの進学者、合わせて202名の新入生が今日ここに、新しい中等科のメンバーとして加わりました。教職員一同ご入学を心よりお慶び申し上げます。
新入生諸君は見るからにきらきらしていますね。迎えるこちらの気持ちも輝きます。今日の気持ちを覚えておきましょうね。皆さんの中等科生活が夢にあふれたものとなるように、学校として努力して行きたいと改めて今感じています。
本日は来賓として、学校法人学習院 耀英一院長、平野浩専務理事、香取純一常務理事、島津忠美常務理事、城谷俊一郎常務理事、学習院桜友会 諸戸清郎副会長、学習院父母会 神山直己会長、学習院中等科高等科櫻友会 草野忠廣副会長にご臨席を賜っています。ご来臨まことにありがとうございます。
昨年度、社会と学校は新型コロナの影響から徐々に脱け出し、またインフルエンザの猛威をくぐり抜けて、今年ようやく平穏な春を迎えることができました。本日の入学式では、ここ数年行ってきた感染症対策を極力撤廃しました。ただ、感染症に対する警戒心は個人ごとに異なりますので、お互いへの配慮として必要に応じてマスクをつけたり近距離での会話は短く済ませるなどの対応を心がけてください。ご理解をよろしくお願いいたします。
ご存知のように学習院は歴史ある学校で、弘化四年、京都に開かれました。明治十年(1877年)、東京・神田錦町に改めて開設され、以来今日まで社会のリーダーを輩出して来ました。2027年に創立150周年を迎えます。現在は耀院長の下、三年後の150周年を目途に、その先の未来に向けての準備としてさまざまな計画を策定しているところです。
その学習院が掲げる理念は「ひろい視野 たくましい創造力 ゆたかな感受性」という三つの言葉に表現されています。広い世界をよく見て、敏感に感じ取り、創造的な発想を巡らせることを表しています。新入生の皆さんはこの三つの言葉をまず覚えておいてください。この言葉を日々の生活に活かすための鍵となるのは、学習院が私学として再出発した時期に学習院長をお務めになった安倍能成先生の残された「正直であれ」という言葉であると私は考えています。安倍先生は哲学者であり、文部大臣として戦後日本の教育再興に尽力され、その後、新しい教育制度の下で院長として学習院の在り方を示されました。そこの扉の向こう、ホワイエに先生の像が置かれています。この後に歌う院歌を作られたのも安倍先生です。 正直とは、嘘をつかない、ということですが、ここで言う意味はそれだけではありません。事実に基づいて物ごとをありのままに、自分の立場からの見方や都合を含めることなく、公平な態度で受け留めることを指しています。
今日からここ中等科で学ぶ皆さんに、私から二つのことを求めたいと思います。まず一つ目として、自分の頭を使ってものごとを考えようとする習慣を身につけてください。日々の生活の中でご家族や先生から何かを言われることがあったら、もちろんそれに従ってください。ただ従うだけではいけません。その方はなぜ、どのような意図でそのことを言われているのか、そのことを通して皆さんにどうなって欲しいのか、それを考え、さらにそのことについて自分はどう思うのか、よく考えてください。そして二つ目に、考えるにあたり自分にどう見えたか、自分がどう思ったかという自分の見方を持ちつつも、それにこだわらず他の人の意見をよく聞いてください。思い込みを持たず、正直に公平にありのまま物ごとを捉える、真実に対する謙虚な態度を身につけてください。
では私はなぜこの二つのことを皆さんに求めているのでしょうか、この後で早速自分の頭で考えてみてください。ヒントを言います。皆さんは六年前に初等科・小学校に入学しました。そしてこの三月に卒業しましたね。六年間は決して短くはありませんが、時間は必ず経過します。いずれ六年後には皆さんは高等科を卒業することになります。これがヒントです。
さて二つ目のこと、正直に公平にありのまま物ごとを捉える真実に対する謙虚な態度を身につけるためには、心の準備が必要です。何でも分け隔てなく受け容れるフランクな心と、目の前の相手と自分を同等にリスペクトする心を持たなければなりません。フランクとは、率直とか、ざっくばらんな様子をいいます。リスペクトとは大切にすることです。自分の頭を使って考えて意見を持つと同時に、他の人の意見を受け容れて相手と自分を同等にリスペクトするフランクな心を持って、ひろい視野、たくましい創造力、ゆたかな感受性を育んで欲しい、そのように考えています。
ご家族の皆さま、中等科入学という節目を迎え、感慨ひとしおのことと拝察します。ご承知のように、子どもの成長は決してエスカレーターのようではありません。自分で上る階段という表現も近いものがありますが、一方通行に上るだけをしてくれるわけではなく上ったり下ったりの繰り返しです。時折大人の顔を見せるものの、まだまだ子どもだと感じるときも多くあるでしょう。それが中等科生です。お子さまがさまざまな表情を見せるこの時期を、是非この学校とともに歩んでください。ご家族にとって最も身近な存在としてこの学校は協力してまいります。
新入生諸君、皆さんの小学校・初等科時代の後半には新型コロナやインフルエンザの影響がたくさんありました。これから始まる中等科での生活は本来のものに戻り、勉強とともに部活動・委員会活動、学校行事が盛りだくさんに用意されて皆さんを待っています。ここで過ごす毎日を大いに楽しんでください。そして多くのことを自ら考え、学んでください。まだまだ自分の知らないことがたくさんあることに気づき、思い込みを持たずに相手と自分を同等にリスペクトしてください。フランクな心をもって共に多くを学び合って行こうではありませんか。
以上をもちまして、新入生の皆さんを迎えるにあたっての私からの言葉といたします。
令和六年四月七日
学習院中等科長 髙城彰吾