令和4年度卒業式 科長告辞
三年生の皆さん、中等科卒業おめでとうございます。
本日は卒業生についてはマスクの着用を自由とし、在校生は二年生がこの会場で、一年生は教室で参加する形で行っています。新型コロナの感染状況はいまや発表される数字から正確には分からないものとなっていますが、社会の受け留めとして2020年からの三年間でおそらく一番穏やかな春となっています。マスクを自由としつつ、他の感染対策をしっかり行いながらの卒業式です。ご協力をお願いいたします。
本日は来賓として、学校法人学習院より耀英一院長、平野浩専務理事、香取純一常務理事、江崎博文常務理事、学習院桜友会より塚原穰副会長、学習院父母会より青山英史副会長、学習院中等科高等科櫻友会より斉藤正彦会長にご臨席を賜っています。ご来臨まことにありがとうございます。
今日は、皆さんに三つのことをお話ししようと思います。しっかり聞いてください。
思い起こせば三年前、皆さんの入学式は六月のことでした。それはこれまで誰も経験したことのない事態でした。入学以来のマスク生活でしたから、今日マスク無しだとちょっと落ち着かないかもしれませんね。マスクなしで晴れやかな気分でしょうか。中にはやはりマスクをしていたい人もいると思います。着けたままでかまいません。そう簡単に行動は変えられないという面もあるでしょう。このように、物ごとの受け留め方は人によって大きく異なるわけです。そういうことを新型コロナの中で、私たちはかなりたくさん学びました。これからは社会や学校のいろいろな面でコロナ前の状況を取り戻す努力が始まります。この先、これまでの三年間を思い出すことはだんだんなくなっていくかもしれません。でもこの三年間は皆さんにとっての共通の体験として記憶の奥にしまわれて、時間が経っても消えることはないでしょう。どうせ残る記憶であるなら、貴重な体験としてこれからに役立てる方向を考えてください。とくにどのような状況で人々はどのような行動を選択したのかという点です。コロナ以外の感染症、災害、不安定な国際情勢など、この先の不透明な未来を考える際に参考になることがたくさんあるように思います。たとえば先ほどのマスクに見られるような、物ごとの受け留め方に人によってかなり大きな幅がある、ということは、多くの場面で充分に考えられることです。人は、自分の主観的な判断がどの程度一般的なものなのかを謙虚に捉えなければなりません。自分と同じように考える人は必ずしも多くないかもしれない。以前お話しした、相手と自分を同等にリスペクトする心、それがここでも必要とされます。そういったことはコロナを経験した我々は忘れずに記憶しておきましょう。
さて、コロナの話ばかりでこの三年間を終えるわけにはいきません。皆さんのこれからのことを考えましょう。多くの生徒は高等科に進学しますが、他の進路を取る諸君もいます。このメンバーでこうして一同に会うのは今日までとなりますが、中等科時代を共有する、今皆さんの傍らにいる友だちをこれからも大切にしてください。いずれの進路にせよ、これから先のことを考えるには、これまでの自分のことを踏まえるのが智慧というものです。過去に経験した卒業を思い出してください。幼稚園・保育園や小学校の卒業がありましたが、回数を重ねるというよりも年齢が進むにつれ、卒業を迎える自分自身の感じ方が変化して来ていると思います。過去の卒業と今回では、自分の受け留めとして何が変化しているか考えてみてください。過ぎ去った年月に対する思いや次の学校への期待と不安の混じり具合など、違いはいろいろあると思いますが、今の皆さんはこれまでより、在学中の自分自身の変化というものをよりはっきりと自覚できているのではないでしょうか。
小学校・初等科は何となくというか普通に六年間を過ごしていたら卒業となったかもしれません。今の皆さんには、これまでの日々がただ定められた年限を過ごしただけではなく、毎日何かを感じながら一日一日活動を積み重ねた結果として今日の卒業を迎えた、という自覚が強くあると思います。在学中にどこまで気づいていたかは人それぞれですが、皆さんはこの三年間何かに向けて自分の力で進み、自分のなかで何かを変化させ、また何かを作り出しながら、前に進もうとした。そして今日卒業を迎えました。この卒業の重みはすなわちこの日々の重みは自分自身が決めるものです。自分のなかに築いた何か、それがはっきり形があってもなくても、それを自分自身がしっかりと感じておくことがこの先の高校生活をより有意義にすることにつながるでしょう。
もう一つ考えておくべきことがあります。それは、ご家族への感謝です。皆さんが日々何かに力を注いだ以上に、ご家族は皆さんの毎日のために力を注ぎました。皆さんの生活全般、食事、洗濯はもとより、学校で必要となるさまざまな費用を捻出するのも簡単ではなかったはずです。思春期に道を踏み外すことのないように、間違ったことをしないようにと皆さんに分からないような工夫もなさったことでしょう。それがうまくかみ合わずに、本人としてうまく受け容れられないこともあったかもしれません。でもご家族は誰よりも強く皆さんの成長を願い、祈り、案じていました。そのことへの感謝を、この機会に改めて感じてください。できればその感謝を言葉にすると良いと思います。今日の日を迎えた感慨は、皆さんだけのものではないことを決して忘れないでください。
ご家族の皆さま、ご子息の中等科ご卒業、まことにおめでとうございます。教職員一同、ご子息の成長を心よりお祝い申し上げますとともに、皆さまのご協力に深く感謝いたします。
卒業生諸君、改めておめでとうございます。これからも頑張ってください。
以上をもちまして、私からのはなむけの言葉といたします。
令和五年三月十七日
学習院中等科長 髙城彰吾