令和7年度 卒業式 科長告辞

 三年生の皆さん、中等科卒業おめでとうございます。

 

 今日はこの季節らしい良い日になりそうです。この良き日を楽しみましょう。

 

 コロナ禍が過ぎてすでに二年以上が経ちますが、今年度もインフルエンザが猛威を振るいました。正堂内には多くの方々がお越しです。感染対策にはお互いにご配慮をお願いいたします。

 

 本日は来賓として、学校法人学習院より耀英一院長、平野浩専務理事、島津忠美常務理事、佐藤吉孝常務理事、学習院桜友会より諸戸清郎会長、学習院父母会より大木喜紀副会長、学習院中等科高等科櫻友会より斉藤正彦会長にご臨席を賜っています。ご来臨まことにありがとうございます。

 

 今日は、皆さんに三つのことをお話ししようと思います。しっかり聞いてください。

 

 私がここ最近よく話していることとして、自分自身に期待する心を大切にして欲しい、ということがあります。このことについて、今日は少し詳しく述べたいと思います。

 

 まず一つ目です。皆さんはそれぞれに、自分自身に対するあるイメージを持っていることと思います。例えば、自分はそこそこまじめで、勉強はそんなに得意ではないけれど、好きなことは頑張るほうで周囲から頼りにされていることもある、とか、自分はどちらかといえばいい加減な性格で勉強はぜんぜんだけど、友だちと一緒のことをやるときは必ず友だちのことを大切にしていて、大方の友だちからも大切にされている、とか、何がしかの自分の特徴を自分なりに感じていることと思います。それが実際の自分自身の姿を捉えているか、周囲の人の評価と同じかどうか、ということは、それはその方がいろいろな意味で良いことは確かですが、ここではあまり問題ではありません。何しろ自分自身に対するあるイメージを持っていることをまず大事にしましょう。

 

 さて、そのイメージはこれからの皆さんの人生で、ずっと変わらないのでしょうか。先のことは分からない、というのが正直なところだと思いますが、でも何となく、自分がそんなに大きく変わるものでもないだろう、という感覚とともに、これから高校生さらに大学生になるうちにはきっともっと何かが違った存在になっていて自分のイメージも少しは変わるのではないか、という期待もあるのではないでしょうか。その、何か違ったこと、というのは大きなことかもしれないし、そう大きなことでもないかもしれません。それはあまり問題ではなく、私が大切だと思うのは、その、自分にはきっと今と何かが違った存在になる可能性がある、ということを意識することだと考えています。これを、自分自身に期待する心、と言って、これまで何回かお話ししてきました。

 

 ではそれが何故大切なのか、これまで皆さんにお話ししてきたことに当てはめて考えてみましょう。例えば、正直であれ、という安倍能成先生の言葉について私は次のように言ったことがあります。正直とは単に嘘をつかない、という意味に留まらない。何かを目の当たりにしたとき、その事実に対する自分の思いや見方を一旦脇に置いて、事実をありのままに捉えることである、そのように言いました。これは実のところなかなか難しいことで、ある事実に対して人はそれぞれに自分の価値観を基に、こうあるべきだ、とか、それは受け容れられない、とかいう思いを抱くものです。思いを抱くことは大切なのですが、眼の前で起こっていることに対してそこに自分の思いが乗っかってしまうと、事実を事実として捉えられなかったり、見誤った対応をしてしまったりするものです。私もこれを時々やってしまいます。対応の幅を広く取るには、まずは事実を事実として捉えてそれをいろいろな角度から眺めることが必要ですから、自分の思いや見方は一旦脇に置き、そのものをフランクに捉えることが大切です。正直という言葉はそういうことを求めているのですが、自分の思いや見方を脇に置く、つまり自分の価値観から少し離れてフランクに構えるには、ちょっとした勇気が必要です。その勇気の元になるものが、自分自身に期待する心、だと考えています。これまでの見方から一旦離れて事実を眺め直した時に自分はこれまでよりも少しだけ大切なものに気づくことができるかもしれない、という自分に対する期待があれば、勇気を持って自分の価値観、思いや見方を一旦脇に置くことができるのではないでしょうか。正直ということも、じつは自分自身に期待する心によって支えられているのです。

 

 皆さんは今日卒業を迎え、これから新しい世界に飛び込んで行きます。新しい世界では、きっと皆さんを新しい仲間として迎え入れてくれる場があることでしょう。そこにはこれまで経験したことのない場面がきっとあります。そんな時、自分自身に期待する心をしっかりと持ち、これまで気づかなかった見方を受け容れて、勇気を持って新しい価値観を自分の中に築き上げて欲しいと思います。

 

 二つ目です。よく聞いてください。

 

 皆さんの中の多くの人は高等科に進学しますが、他の進路を取る諸君もいます。このメンバーでこうして一同に会うのは今日までとなりますが、中等科時代を共有する、今皆さんの傍らにいる友だちをこれからも大切にしてください。

 

 さて、皆さんが共有しているものは何でしょうか。いろいろあると思います。学校行事であったり普段の何気ない生活の一場面の記憶かもしれません。皆さんの多くは今回の卒業が人生で三回目の卒業だと思いますが、これまでの卒業と比べると、在学中の自分自身の変化というものをよりはっきりと自覚できているのではないでしょうか。その自分自身の変化というものが、皆さんが共有する中等科時代そのものなのです。この三年間、友だちも自分も変化の中にあったのです。三年前、皆さんは「大人の仲間入りです」と言われました。私もそれに類することを言いました。この三年間に保護者の管理や制限が徐々に減り、自分で決められる範囲が増えてきたのではないかと思います。これは周りから大人であることを期待されているということです。この周りからの期待を自分のために活かすには、自分の中に自由を築く必要があります。自由とはただ管理や制限が減るだけではなく、管理や制限が減った中で自分がどのようにありたいかを思い描き、自分の人生をどうするか自分で判断することです。当然、自分自身への責任が大きくなります。そのためには周囲の大人が皆さんに期待しているように、皆さん一人ひとりの自分自身に期待する心がやはり大切なのです。自分自身に大いに期待し自分をリスペクトしてください。またそのきっかけをくれた周囲の人たち、ご家族や先生方をリスペクトしてください。

 

 自分の人生を自由に切り拓く人を大人といいます。大人というものはその資格を人から与えられるものではなく、自分で自分の中に作っていくものです。このことをしっかり考え、自分自身への責任を果たし、周囲に信頼される大人に成長してください。

 

 もう一つ考えておくべきことがあります。それは、ご家族への感謝です。皆さんが日々何かに力を注いだ以上に、ご家族は皆さんの毎日のために力を注ぎました。皆さんの生活全般、食事、洗濯はもとより、思春期に間違ったことをしないようにと皆さんに分からないような工夫もなさったことでしょう。それがうまくかみ合わずに、本人としてうまく受け容れられないこともあったかもしれません。でもご家族は誰よりも強く皆さんの成長を願い、祈り、案じていました。ご家族のおかげで皆さんは自分自身に期待する心を持てているのかもしれません。そのことへの感謝を、この機会に改めて感じてください。できればその感謝を言葉にすると良いと思います。今日の日を迎えた感慨は、ご家族のものでもあることを決して忘れないでください。

 

 ご家族の皆さま、ご子息の中等科ご卒業、まことにおめでとうございます。教職員一同、ご子息の成長を心よりお祝い申し上げますとともに、皆さまのご協力に深く感謝いたします。

 

 卒業生諸君、改めておめでとうございます。これからも頑張ってください。

 

 以上をもちまして、私からのはなむけの言葉といたします。

 

令和八年三月十七日

 

学習院中等科長 髙城彰吾

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